ハイドロコロイド被覆材の剥がし方      (コットンパフ使用)

ハイドロコロイド被覆材
12 /21 2022
ハイドロコロイド被覆材は粘着性があるので、交換する時に痛みを伴うのが難点です。そのため、痛くなく剥がす方法はありますか?とよくご質問をいただきます。
ハイドロコロイド製剤は水分を吸収するとゲル化するため、①流水で洗いながら剥がす方法又はお風呂のなかで剥がす方法 ②濡らしたキッチンペーパーにワセリンを塗り剥がす方法 ③貼る前に薄くワセリンを塗り、粘着を弱める方法をお話ししていますが、最近、化粧用コットンパフが気軽に使えることが分かったので、紹介させていただきます。

プラスモイストの剥がし方
【化粧用コットンパフ】
脱脂綿でできているため吸水性があります。

ハイドロコロイドの剥がし方´´´´´
コットンに水分を含ませ、ハイドロコロイドに浸み込ませるようにすると剥がしやすくなります。

なぜ褥瘡・創傷を石鹸で洗浄したがるのか?

その他
12 /12 2022
なぜ褥瘡を石鹸で洗浄したがるのか?
それは傷と傷口の周囲に付着していてる汚れなどが褥瘡の治らない要因だと考え、何かひと手間(石鹸洗浄)かけて治療することが必要だと思っているからです。

現在、手元にある2015年の褥瘡のガイドラインには、
CQ8.6】褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚の洗浄は有効か。
【推奨文】弱酸性洗浄剤による洗浄を行ってもよい。
【解説】創周囲皮膚には、水に不溶性のたんぱく質や脂質などの汚れが含まれているため、健常皮膚と同様に洗浄する必要がある。(中略)皮膚の生理機能を正常に保つことが創周囲からの上皮化を妨げないとするならば、石鹸より弱酸性の洗浄剤、さらに皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択することが望ましいといえる。なお、褥瘡周囲皮膚の洗浄時に創内に入った皮膚洗浄剤は、生理食塩水や微温湯などの創部用の洗浄液で洗い流すとよい。以上より、褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚は弱酸性洗浄剤で洗浄を行ってもよいとして推奨度C1とした。

ここ10年程、石鹸を泡立てて創周辺皮膚を洗うのが主流になっています。
こんもりと泡立てた石鹸を創の周囲にのせて洗うのですが、書籍や褥瘡関連のサイトをみると、創内にも泡立てた石鹸を使用して洗浄している様子が見受けられます。界面活性剤で洗うという行為によって細胞が再生したり、痛みを伴わなければ取り立てる必要はないと思います。しかし、当クリニックに逃げてくる患者さんのなかには、石鹸洗浄によって苦痛を訴える方が大半をしめています。その声を目の当たりにすると、ガイドライン通りに手間をかけて善意で行っている治療が苦痛を与えていることを知って欲しい気持ちになります。褥瘡ができる患者さんは、自ら痛みを訴えることや痛みを感じることのない方が多いため実感が湧かないと思いますが、実際には多くの苦痛を与えているのです。

ガイドラインの解説には「創周囲皮膚には、水に不溶性のたんぱく質や脂質などの汚れが含まれているため、健常皮膚と同様に洗浄する必要がある」と記述されていますが、創周囲の不溶性タンパク質や脂質は流水で流すだけである程度洗い流されますし、たとえ少し残っていたとしても全身状態によっては湿潤環境によって上皮化しています。

また「皮膚の生理機能を正常に保つことが創周囲からの上皮化を妨げないとするならば、石鹸より弱酸性の洗浄剤、さらに皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択することが望ましいといえる」とありますが、当クリニックを受診している乾燥肌の患者さんのなかには、毎日ボディーソープで洗うことによって皮膚の油分がなくなり、それにより乾燥肌を招いている方が多くいます。その方には身体の汚れは水溶性でありお湯で流すだけで落ちるため、洗浄力の強いボディーソープは使用せずにワセリンで油分を補うようお話すると徐々に肌の状態が整ってきます。界面活性剤で洗うことはかえって皮膚の生理機能を正常に保てなくさせているのです。褥瘡周囲の浸軟した皮膚こそ、刺激となる界面活性剤は使用せず流水で流すだけにし、その後は皮膚保護のために撥水性のあるワセリンを塗るだけで十分です。

褥瘡とは寝たきりの方や脊髄損傷で痛みを感じない方など、長時間同じ箇所を圧迫したことによってできる皮膚潰瘍です。褥瘡が治らない要因を石鹸や亜鉛などに持っていきがちですが、大切なことは、褥瘡が治らない原因(全身状態によるものか?持続的な圧迫によるものか?治療によるものか?など)を総体的に判断するべきだと思いますが、皆様はどうお考えでしょうか?

今日の症例(足底のズイコウパッド処置)

難治性潰瘍
12 /05 2022
50代男性(糖尿病性潰瘍)

2018年10月に右第3趾の腫れと発熱で近医を受診し糖尿病の診断を受ける。
2020年11月に再度発熱。糖尿病性壊疽で右第2・3趾切断。2021年1月に足底に潰瘍ができ、ゲーベンクリーム+ガーゼで治療していたが改善しなかったため、当クリニックを受診し湿潤治療を開始する。

【既往歴】
 糖尿病
【医師の説明】
糖尿病性の潰瘍は血流障害・末梢神経障害により治りにくい潰瘍です。今使われているゲーベンクリームによりかえって傷を深くしてしまうので、湿潤治療にしてしばらく様子をみていきましょう。
sokuhai´
足底の潰瘍。
過剰な角質(潰瘍周囲の白い部分)を切除する。
sokuhai_2022120513544226e.png
足底の足指に近い部分はパッドが取れやすいため、ズイコウパッドをカット(点線部分)し、指に入れ込み固定する。

患者さんからの治療経過報告(足背ヤケド)

熱傷
11 /26 2022
ゆで汁による足背熱傷(50代女性)

【現病歴】
R 4.10月4日、枝豆を茹でていてゆで汁をこぼし左足にヤケドを負った。近くの大学病院を受診し、石鹸洗浄をした後にリンデロンVGとガーゼで治療していた。痛みが強く皮膚移植が必要と説明されたため、当クリニックを受診。受診当日はズイコウパッド+ワセリンで治療を開始する。翌日には痛みが無くなり楽になったと喜ばれていた。



以下、患者さんが治療経過をまとめて持参してくださったので、許可をいただき掲載させていただきます。

患者さんからのヤケドの詳細´

足背ヤケド´
受傷後42日後(R4.11月15日)上皮化終了。

【補足】傷を治す液(浸出液)が少なくなり傷口も浅くなったので、一時期、ハイドロコロイド包帯に変更しましたが、足首の部分が擦れてしまって痛いということだったので、終盤までズイコウパッドを使用して治療を行いました。擦れて痛い時期にステロイド軟こうを使用したところ、痛みが軽減しました。

※以前の湿潤治療ナースのブログも参考にして下さい。


患者さんのひと工夫               (プラスモイスト®のカッティング)

プラスモイスト
11 /20 2022
11か月 乳児(ストーブによるⅢ度のヤケド)

【現病歴】
旅行中にストーブに両手を付けてヤケドを負った。近医ではアズノール軟膏で治療。翌日、住まいの近くの病院を受診して、石鹸洗浄・プロスタンディン軟膏・フィブラストスプレーが処方されたが、両親が心配になりネットで調べて当クリニックを受診された。

【医師の説明】
ストーブは温度が高いので一部深くなっている可能性があります。治るまで時間はかかりますが、しばらくプラスモイスト®+ワセリンで様子を見ていきましょう。

プラスモイストあかみ切り込み
プラスモイスト®はミトン型にして覆っていたが、手を動かすことによってプラスモイスト®の端が皮膚に当たって擦れてしまい、その部分が線状に赤くなってしまった(丸い円の部分)。
pura切り込み
そのため、写真の黒い点線の部分をカットして使用していた。それによって赤みも消失し、動かしやすくなったとのこと。

※以前の湿潤治療ナースのブログも参考にしてください。

湿潤治療ナース

湿潤治療の工夫や日常の感じたことを紹介させていただきます。
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