湿潤療法による感染が心配で受診を ためらっている患者さんへ。
その他湿潤療法は、医師による正しい知識のもと治療を行えば、感染の心配はありません。火傷の患者さんやご家族から多く聞かれるのが、湿潤療法による創感染が心配ですが大丈夫でしょうか?という質問です。詳細は夏井睦院長のホームページに記載されている通りですが、現代は感染が起きても抗生剤があるので恐れることはないのです。
現時点(R5年2月28日)の創感染の対応とその治療内容について説明させていただきます。
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1)抗生剤
とりあえず,創部痛や発熱などの創感染症状が見られたら抗生剤を投与する。もしかしたら,ある面積以上,ある深度以上の場合は受傷直後から抗生剤を投与する。
2)超早期の創面の被覆
これについては「高吸収性で創面に固着しない,あまり乾燥させない」ものがあればベストだろう。超早期ではこれを頻回に取り替えることで,細菌の増殖スピードに対処するしかない。もちろん,水疱膜や創表面を覆うゼリー状のフィブリン膜(?)をこまめに切除することも重要。
現時点ではポリウレタンフォーム,アルギン酸塩被覆材,ハイドロファイバーが最も理想に近いが,保険病名に熱傷がなく,高価である点が難点である。(中略)「穴あきポリ袋+紙おむつ」はかなり有用であるが,やはり超早期には頻回の交換が必要だろう。 夏井睦「新しい創傷治療」より
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1)の抗生剤に関しては、広範囲や深さのある火傷の方には、事前に抗生剤を処方しているので、38℃以上の熱や痛みが出た時など、医師の指示に応じて抗生剤を飲んでいただきます。小児の突然の発熱は、ウイルス感染症や突発性発疹、まれに川崎病があります。発熱があった時は、まず近隣の小児科受診をご案内して熱の原因を調べていただき、小児疾患でない場合は、火傷からの発熱であることが考えられるため、その時は抗生剤を数日間飲んでいただきます。そのうちに数日で創感染も落ち着いてきます。創感染の場合は患部に痛みがあり、創の周囲が広範囲に赤くなっていることが多いので、傷口を確認すると直ぐにわかります。
2)の創面の被覆に関しては、先ず医師により感染の元となる水泡膜やフィブリン膜を切除したうえで、火傷の初期や深い火傷の箇所は細菌の温存を作らないよう、高吸収パッドで治療していきます。以前は「穴あきポリ袋+オムツ」を使用していましたが、吸収力が不十分であること、穴あきポリ袋の凹凸が創面に当たってしまい痛みを訴える方が多かったので、現在はズイコウパッド(ズイコウメディカル社)を使用しています。交換回数は、基本は1日1回の交換で良く、吸収しきれないほど多くの浸出液が出たり、吸収したパッドの膨らみが創面に当たって痛みを伴う時は、その都度交換していただくように説明しています。
以上のように、創感染といってもきちんと医師の判断のもと対処すれば大丈夫です。
感染が心配で受診が遅れてしまい、長期間痛い思いをしたり、その結果、傷が深くなってしまい傷跡が残ってしまう方が多くいます。当クリニックでは、こちらの治療方針を患者さんに押し付けることはしませんので、受診を迷っている方は、まず、湿潤療法の治療説明を聞いたうえで、今後の方針を決めて下さい。