今日の症例(海水浴での日焼け)

その他
04 /19 2023
20代男性(日光皮膚炎によるびらん創)。

【現病歴】
海水浴に行った時に、日焼け止めを塗り忘れてしまったところが痛むとのことで来院された。

【既往歴】
なし

【医師の説明】
日焼けにより軽いやけどのような状態になっています。日焼けの部分は空気に触れると痛いので、傷口は乾かさない治療で治していきます。使用するのは食品用ラップです。食品用ラップにワセリンを塗って傷口に当てると痛みが和らいできます。食品用ラップ+ワセリンは1日1回、入浴の時に交換して下さい。指で触って痛みがなくなったら、何も当てる必要はありません。


以下、日焼けの処置について説明します。
日焼けの範囲が狭い場合は、様々な治療材料(ハイドロコロイド被覆材やプラスモイストなど)を使用してもいいのですが、広範囲で動かしやすいことも考慮して、この患者さんには食品用ラップを使います。
日焼け´
先ず、食品用ラップ(野菜用の薄いラップが良い)にワセリンを塗って下さい。
ワセリンは融点が38℃から60℃低く体温で柔らかくなるため、適量で大丈夫です。動く箇所や痛みがひどい部分は、ワセリンを足して下さい。

日焼け´´
ワセリン付きの食品用ラップを日焼けした部分に当て、ズレないようにテープで固定します。表面が乾燥しなければいいので、ラップは遊びを作るようにフワッとのせて下さい。

日焼け´´´
ワセリン付き食品用ラップのみだと洋服がべたついてしまうため、チューブネットで覆い、

日焼け´´´´
チューブネットが下がってこないように、ネット包帯で固定します。
汗疹ができるため1日1回は交換して下さい。ワセリンは体温で自然と溶けてくるので、無理して洗い流す必要はありません。

湿潤療法による感染が心配で受診を      ためらっている患者さんへ。

その他
02 /28 2023

湿潤療法は、医師による正しい知識のもと治療を行えば、感染の心配はありません。火傷の患者さんやご家族から多く聞かれるのが、湿潤療法による創感染が心配ですが大丈夫でしょうか?という質問です。詳細は夏井睦院長のホームページに記載されている通りですが、現代は感染が起きても抗生剤があるので恐れることはないのです。

現時点(R5年2月28日)の創感染の対応とその治療内容について説明させていただきます。

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1)抗生剤
 とりあえず,創部痛や発熱などの創感染症状が見られたら抗生剤を投与する。もしかしたら,ある面積以上,ある深度以上の場合は受傷直後から抗生剤を投与する。
2)超早期の創面の被覆
 これについては「高吸収性で創面に固着しない,あまり乾燥させない」ものがあればベストだろう。超早期ではこれを頻回に取り替えることで,細菌の増殖スピードに対処するしかない。もちろん,水疱膜や創表面を覆うゼリー状のフィブリン膜(?)をこまめに切除することも重要。
 現時点ではポリウレタンフォーム,アルギン酸塩被覆材,ハイドロファイバーが最も理想に近いが,保険病名に熱傷がなく,高価である点が難点である。(中略)「穴あきポリ袋+紙おむつ」はかなり有用であるが,やはり超早期には頻回の交換が必要だろう。            夏井睦「新しい創傷治療」より
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1)の抗生剤に関しては、広範囲や深さのある火傷の方には、事前に抗生剤を処方しているので、38℃以上の熱や痛みが出た時など、医師の指示に応じて抗生剤を飲んでいただきます。小児の突然の発熱は、ウイルス感染症や突発性発疹、まれに川崎病があります。発熱があった時は、まず近隣の小児科受診をご案内して熱の原因を調べていただき、小児疾患でない場合は、火傷からの発熱であることが考えられるため、その時は抗生剤を数日間飲んでいただきます。そのうちに数日で創感染も落ち着いてきます。創感染の場合は患部に痛みがあり、創の周囲が広範囲に赤くなっていることが多いので、傷口を確認すると直ぐにわかります。

2)の創面の被覆に関しては、先ず医師により感染の元となる水泡膜やフィブリン膜を切除したうえで、火傷の初期や深い火傷の箇所は細菌の温存を作らないよう、高吸収パッドで治療していきます。以前は「穴あきポリ袋+オムツ」を使用していましたが、吸収力が不十分であること、穴あきポリ袋の凹凸が創面に当たってしまい痛みを訴える方が多かったので、現在はズイコウパッド(ズイコウメディカル社)を使用しています。交換回数は、基本は1日1回の交換で良く、吸収しきれないほど多くの浸出液が出たり、吸収したパッドの膨らみが創面に当たって痛みを伴う時は、その都度交換していただくように説明しています。

以上のように、創感染といってもきちんと医師の判断のもと対処すれば大丈夫です。

感染が心配で受診が遅れてしまい、長期間痛い思いをしたり、その結果、傷が深くなってしまい傷跡が残ってしまう方が多くいます。当クリニックでは、こちらの治療方針を患者さんに押し付けることはしませんので、受診を迷っている方は、まず、湿潤療法の治療説明を聞いたうえで、今後の方針を決めて下さい。

病院選びの最後の決め手はクチコミと電話対応。

その他
01 /30 2023
2019年にスマートホンの普及率が高まり、病院も患者さんに選ばれる時代となりました。その病院選びの最終的な決め手となるのがクチコミと電話対応です。

傷を負ったときに湿潤治療を受けようと思うのは、検索すると出てくる夏井院長のサイトからが多いのですが、そこから受診につながるのは、知り合いからの紹介やネットのクチコミ情報です。「何かあったらなついキズとやけどのクリニックに行ったらいいよ、と聞いていたので受診しました」との有難いお声や、「クチコミで子供に優しいクリニックと書いてあったので、大人にも優しいと思ってきました」など嬉しいお言葉をいただきます。開院6年目のクリニックにしてはクチコミの数は少ないほうだと思います。それは患者さんの自発的な書き込みを望んでいるからです。そのほうが真実の声が伝わりやすいため、院長の考えでそのようにしています。

そしてもうひとつ重要になってくるのは電話対応です。クリニックでは事前に電話で問い合わせをされる患者さんが殆どです。事務の者が応対しているのですが、患者さんの視点に立ったとても細やかなやりとりをしています。それを聞いていて、患者さんの不安が少なく受診できることがクリニック来院につながっていると感じています。

クチコミが様々な形で広がっていくなかで、傷を負ったら「なつい式湿潤治療」と言っていただけるよう、これからもただ誠実に患者さんやご家族と関わっていきたいと思います。

なぜ褥瘡・創傷を石鹸で洗浄したがるのか?

その他
12 /12 2022
なぜ褥瘡を石鹸で洗浄したがるのか?
それは傷と傷口の周囲に付着していてる汚れなどが褥瘡の治らない要因だと考え、何かひと手間(石鹸洗浄)かけて治療することが必要だと思っているからです。

現在、手元にある2015年の褥瘡のガイドラインには、
CQ8.6】褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚の洗浄は有効か。
【推奨文】弱酸性洗浄剤による洗浄を行ってもよい。
【解説】創周囲皮膚には、水に不溶性のたんぱく質や脂質などの汚れが含まれているため、健常皮膚と同様に洗浄する必要がある。(中略)皮膚の生理機能を正常に保つことが創周囲からの上皮化を妨げないとするならば、石鹸より弱酸性の洗浄剤、さらに皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択することが望ましいといえる。なお、褥瘡周囲皮膚の洗浄時に創内に入った皮膚洗浄剤は、生理食塩水や微温湯などの創部用の洗浄液で洗い流すとよい。以上より、褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚は弱酸性洗浄剤で洗浄を行ってもよいとして推奨度C1とした。

ここ10年程、石鹸を泡立てて創周辺皮膚を洗うのが主流になっています。
こんもりと泡立てた石鹸を創の周囲にのせて洗うのですが、書籍や褥瘡関連のサイトをみると、創内にも泡立てた石鹸を使用して洗浄している様子が見受けられます。界面活性剤で洗うという行為によって細胞が再生したり、痛みを伴わなければ取り立てる必要はないと思います。しかし、当クリニックに逃げてくる患者さんのなかには、石鹸洗浄によって苦痛を訴える方が大半をしめています。その声を目の当たりにすると、ガイドライン通りに手間をかけて善意で行っている治療が苦痛を与えていることを知って欲しい気持ちになります。褥瘡ができる患者さんは、自ら痛みを訴えることや痛みを感じることのない方が多いため実感が湧かないと思いますが、実際には多くの苦痛を与えているのです。

ガイドラインの解説には「創周囲皮膚には、水に不溶性のたんぱく質や脂質などの汚れが含まれているため、健常皮膚と同様に洗浄する必要がある」と記述されていますが、創周囲の不溶性タンパク質や脂質は流水で流すだけである程度洗い流されますし、たとえ少し残っていたとしても全身状態によっては湿潤環境によって上皮化しています。

また「皮膚の生理機能を正常に保つことが創周囲からの上皮化を妨げないとするならば、石鹸より弱酸性の洗浄剤、さらに皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択することが望ましいといえる」とありますが、当クリニックを受診している乾燥肌の患者さんのなかには、毎日ボディーソープで洗うことによって皮膚の油分がなくなり、それにより乾燥肌を招いている方が多くいます。その方には身体の汚れは水溶性でありお湯で流すだけで落ちるため、洗浄力の強いボディーソープは使用せずにワセリンで油分を補うようお話すると徐々に肌の状態が整ってきます。界面活性剤で洗うことはかえって皮膚の生理機能を正常に保てなくさせているのです。褥瘡周囲の浸軟した皮膚こそ、刺激となる界面活性剤は使用せず流水で流すだけにし、その後は皮膚保護のために撥水性のあるワセリンを塗るだけで十分です。

褥瘡とは寝たきりの方や脊髄損傷で痛みを感じない方など、長時間同じ箇所を圧迫したことによってできる皮膚潰瘍です。褥瘡が治らない要因を石鹸や亜鉛などに持っていきがちですが、大切なことは、褥瘡が治らない原因(全身状態によるものか?持続的な圧迫によるものか?治療によるものか?など)を総体的に判断するべきだと思いますが、皆様はどうお考えでしょうか?

誰のための説明か?

その他
11 /05 2022
誰のための説明なのか?

最近、患者さんのための説明がこちらの流れを重視した一方的な説明になってしまっていることに気づきました。

診察の際には湿潤治療の基本的な説明は先生が、処置の説明は看護師である私が行っていますが、限られた時間のなかで説明をするので、ある程度はルーティン化してしまいます。しかし、こちらの意識を変えるだけで、もっと患者さんに沿った説明ができるのではないかと思ったのです。

例えば、湿潤治療を知らない患者さんや御高齢の患者さんには理解しやすいようにポイントを押さえた説明にしたり、逆に治療を理解していて詳しい方には、聞きたい内容をより掘り下げて話をするなど工夫できることは様々あります。

そのために患者さんの話や反応を大事にしながら、相手が知りたい情報を分かりやすい言葉で返すという基本的なことを毎日の課題としています。

説明というのは相手が主体です。患者さんが安心して治療が受けられるよう、これからも試行錯誤しながら、患者さんとのやり取りを大切にしていきたいと思います。

湿潤治療ナース

湿潤治療の工夫や日常の感じたことを紹介させていただきます。
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